専門研修内容
皮膚科専門医取得には、5年間の研修期間が必要です。5年間のうち研修期間施設(浜松医大皮膚科)で1年以上の研修が必要となっています。入局後、ほとんどの方は大学で研修を開始します。大学で、以下に記載のような皮膚科医としての基本を学んだあと、連携施設で研修することが多いです。連携施設は2024年3月時点で、下記のとおりです。各施設の研修プログラムの詳細は、こちらをご覧ください。 5年間の研修期間と規定による論文発表、学会発表、講習会受講を済ませると、皮膚科専門医の試験の受験資格がえられます。
連携施設(2024.3月現在)
聖隷三方原病院、浜松医療センター、聖隷浜松病院、遠州病院、磐田市立総合病院、中東遠総合医療センター、島田市立総合医療センター、藤枝市立総合病院、静岡県立総合病院、静岡市立静岡病院、静岡済生会総合病院、静岡市立清水病院、富士宮市立病院、富士市立中央病院、沼津市立病院、静岡医療センター、杏林大学医学部付属病院、京都大学医学部附属病院、横浜市立大学附属病院、東京女子医科大学病院、近畿大学病院
大学見学希望の方は、ページ下記載の連絡先までご連絡ください。
見学は随時受け付けていますが、水曜日の見学をお勧めしています。
一般研修目標
- 皮膚科の診断・治療に関する一般的な知識と技術を修得する。
- 皮膚科診療に必要な関連領域の知識と技術を修得する。
研修行動目標と研修方法
- 皮膚科病棟および外来をローテートし、皮膚疾患患者への医師としての対応、皮膚症状の見方と所見の説明、皮膚症状から考える全身状態など基本的知識を学び、皮膚科検査の基本的手技を確実に行えるようにする。
- 皮膚科の基本的手術ができるようにする。
- 基本的疾患の皮膚病理組織学を学ぶ。
- 皮膚科の本コースの定めるカンファレンス、抄読会などに出席し発表を行う。
研修目標
(1) 経験した方がよい主要疾患
- 湿疹・皮膚炎群(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、貨幣状湿疹、皮脂欠乏性湿疹など)
- 蕁麻疹・痒疹・皮膚瘙痒症(各種)
- 紅斑症(特に多形滲出性紅斑、結節性紅斑、環状紅斑)
- 紅皮症(各種原因によるものを含む)
- 紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病、毛細血管脆弱性による紫斑、特発性色素性紫斑など)
- 血管炎(皮膚アレルギー性血管炎、結節性多発動脈炎、Wegener肉芽腫など)
- 血行障害(livedo症状、Raynaud症候群、下腿潰瘍、静脈瘤、Bürger病など)
- 膠原病(全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデス、全身性強皮症、限局性強皮症、皮膚筋炎、overlap症候群、混合性結合組織病、Sjögren症候群など)
- 膠原病類似疾患・肉芽腫症(壊疽性膿皮症、ベーチェット病、サルコイドーシス、環状肉芽腫など)
- 物理的・化学的障害(熱傷、凍傷、凍瘡、光線過敏症、放射線障害)
- 中毒疹・薬疹
- 水疱症・膿疱症(尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、家族性良性慢性天疱瘡、先天性表皮水疱症、掌蹠膿疱症など)
- 角化症(魚鱗癬群、Darier病、汗孔角化症、黒色表皮腫、毛孔性苔癬、胼胝・鶏眼など)
- 炎症性角化症(乾癬、類乾癬、扁平苔癬、Gibert薔薇色粃糠疹・毛孔性紅色粃糠疹など)
- 皮膚形成異常と萎縮症(弾力線維性仮性黄色腫、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群、Werner症候群、皮膚萎縮症など)
- 代謝異常症(アミロイドーシス、ムチン沈着症、ポルフィリン症、ペラグラ、黄色腫、腸性肢端皮膚炎、糖尿病による皮膚変化など)
- 色素異常症(尋常性白斑、雀卵斑、肝斑、老人性白斑、老人性色素斑など)
- 母斑(表皮母斑、脂線母斑、扁平母斑、蒙古斑、太田母斑、色素性母斑、青色母斑など)
- 母斑症(Pringle病、Recklinghausen病、Sturge-Weber症候群など)
- 汗腺疾患(各種)
- 脂腺疾患(特に尋常性ざ瘡、酒さ)
- 毛髪疾患(特に円形脱毛症、抜毛癖)
- 爪甲疾患(爪甲剥離症、匙形爪甲、時計皿爪、爪甲鈎弯症など)
- 細菌性皮膚疾患(伝染性膿痂疹、痂皮性膿痂疹、丹毒、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、せつ、癰、毛包炎、尋常性毛瘡など)
- 抗酸菌感染症(皮膚結核、非定型抗酸菌症、ハンセン病)
- ウイルス感染症(特にヘルペスウイルス属および乳頭腫ウイルス属、伝染性軟属腫、麻疹、風疹、伝染性紅斑、突発性発疹、手足口病、Gianotti病、AIDS)
- 真菌感染症(白癬、癜風、カンジダ症、スポロトリコーシス、クロモミコーシスなど)
- 動物性皮膚疾患(ライム病、恙虫病、疥癬など)
- 性行為感染症(梅毒、軟性下疳、AIDSなど)
- 腫瘍(上皮性腫瘍、メラノサイト系腫瘍、間葉系腫瘍)
(2) 研修すべき主な診断・検査法
理学的所見 | 硝子圧法、Nikolsky現象、Auspitz現象、Köbner現象、知覚検査、毛細血管抵抗試験(Rumpel-Leede法)、サーモグラフィー、ダーモスコピー、皮膚エコー |
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病原体に関する検査 | 直接検鏡、培養検査(細菌、真菌、抗酸菌)、血清反応(梅毒反応、ASLO値など)、ウイルス抗体価 |
免疫学的検査法 | 皮膚反応(単刺試験、掻破試験、皮内テスト、針反応、ツベルクリン反応)、貼布試験、フローサイトメトリー解析、リンパ球刺激試験 |
光線過敏検査 | 発汗試験(ミノール法 [ヨード・デンプン法])、最小紅斑量測定、UVA照射試験(最小光毒量測定を含む)、可視光線照射試験、光貼布試験、内服照射試験 |
組織学的検査 | 病理組織診断法、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法、電顕法 |
遺伝子検査法 | Southern blot法、Polymerase chain reaction法 |
(3) 研修すべき主な治療法・手術
外用療法 | 外用薬の配合剤及び基剤の選択、外用方法(単純塗布、密封療法、薬浴) |
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理学療法 | ドライアイス療法、液体窒素療法(綿球法)、光線療法(PUVA療法、UVB照射療法)、温熱療法、血漿交換療法 |
全身療法 | 抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド薬、非ステロイド系消炎鎮痛剤、生物学的製剤、抗生物質、抗真菌薬、抗ウィルス薬、免疫抑制薬、化学療法、ガンマグロブリン製剤、免疫チェックポイント阻害薬、その他分子標的治療薬 |
外科的療法及び手技 | 皮膚生検術、リンパ節生検術、筋生検術、皮膚切開術、面皰圧出、軟属腫摘出、胼胝・鶏眼処置、デブリードマン、創傷処理、皮膚皮下腫瘍単純切除術、遊離植皮術、皮弁形成術、爪甲手術 |
細胞診 | Tzanckテスト |
指導体制
外来ではスタッフ・医員の診察・処置の補助をしつつ、診断・治療法等について指導をうけます。
病棟では病棟医長、助教・医員の直接の指導のもと、入院患者さんの診療にあたります。
また回診・カンファレンスでは毎回プレゼンを行い、内容についてスタッフから助言・フィードバックを受けます。
週間スケジュール
(回診、カンファレンス等)
週間スケジュール
午前 | 外来患者の診療・検査の補助、実施 |
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午後 | 入院患者の診療、外来手術の補助 |
月曜日 | 16:30-リサーチカンファレンス |
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水曜日 | 14:30-病棟回診 15:30-病理カンファレンス |
- 皮膚症状の見方、検査の研修
- 皮膚科検査の実施
- 皮膚科手術の補助
- 皮膚病理の見方
病棟診療
主治医として直接入院患者の治療にあたりますが、スタッフをリーダーとするチーム制(3チーム)をとっています。したがって、1人の患者さんをチーム全員でフォローします。毎日午後、各チームで状態把握と治療方針について打ち合わせをし、診療にあたります。さらに週1回の病棟回診で皮膚科全体でディスカッションを行い、適切な診療方針を決定していきます。入院での疾患は皮膚悪性腫瘍が多く、メラノーマやリンフォーマ、血管肉腫などが主体です。その他皮膚筋炎、自己免疫性水疱症などの自己免疫疾患、円形脱毛症や発汗障害に対するステロイドパルス入院、特殊なアレルギー疾患の検査入院もあります。
外来診療
外来を担当する医師を介助し、また検査や皮膚科処置を行います。検査としては、皮膚生検、パッチテスト、光パッチテスト、光線テスト、プリックテストなどがあります。処置には軟膏処置、外科処置があります。また光線治療外来では、ナローバンドUVB療法の担当医として治療に当たります。専門研修2年目以降は自らの外来も担当していきます。
手術
皮膚悪性腫瘍と良性腫瘍の手術を介助します。また粉瘤など小腫瘍については執刀します。簡便な局所皮弁や植皮は執刀できるように教育します。
カンファレンス
週1回入院患者、外来患者のカンファレンスを行っており、現在の状態、問題点、今後の治療などについて討論します。この際、臨床写真、検査所見、病理像などのデータをリアルタイムに抽出してディスカッションします。
皮膚科研究会
地域の皮膚科医も出席しての月1から2回程度の研究会では、症例検討と全国から招請された著名な皮膚科医や研究者らの講演を聴き最新の知識を得ます。
研修評価とフィードバック
各研修内容の修得状況は適宜指導医が評価し、適宜指導・アドバイスを行います。フィードバックを行うことで、充実した研修をサポートし、研修プログラム参加者全員に各自の最適なタイミングで専門医が取得できるよう指導します。
子育てとの両立について
医師に限らず、仕事を続けて行くためにはライフステージによって仕事のペースを調整することが不可欠です。浜松医大皮膚科では、それぞれのライフステージ環境を理解し、困ったときには助け合いながら頑張っていける環境を整備しつつあります。例えば、カンファレンスは通常業務時間内に終了できるよう、スケジュールを組んでいます。また大学内には女性医師支援センターが設置され、大学構内に保育所や病児保育所も整備されており、子育て中の医師が勤務継続できるサポート体制が構築されています。現在女性医師支援センターの支援を受けて勤務を継続している医師は皮膚科に複数名います。また各関連病院でも、子育てをしながらの勤務を可能とするために、労働条件の交渉も適宜行います。
その他
専門研修プログラム終了・専門医取得後の進路
助教以上の教官、関連病院勤務、大学院生(途中者も含めて)、留学、開業などさまざまな道があります。各自の希望、家族状況等を踏まえ、ベストな進路を一緒に考えていきます。
大学院
大学院(医学系研究科博士課程)に進むのは大歓迎です。進学時期は自由ですが、最近は専門医取得後に進学するケースが多いです。通常、8月に大学院試験があります。大学院では、教授および担当スタッフから直接指導をうけます。研究テーマは既に進行しているテーマに関連するものを進めていくことが多いですが、各自の興味に応じて自由です。ディスカッションを通し、どのように発展させるのがベストか、指導教官と一緒に考えます。
留学
留学は、広い視野や経験を持つためにも有益であり、積極的に勧めます。留学先は米国、ドイツ等のことが多いです。行き先は我々が勧めますが、自分で決めても構いません。現在、アメリカに3名留学中です。